投稿日:2018.01.15
神経内科(頭痛について)
- お知らせ
私は森田病院で神経内科を専門にしている医師です。
神経内科は脳・脊髄・末梢神経・筋肉の病気を診る内科です。身体
症状としては、しびれ・力が入らない、入りにくい・歩きにくい・ふらつき・めまい・手足のつっぱり・話しにくい・物が二重に見える・頭が痛い・物忘れがひどい・意識消失等があります。
そういう症状が現れた時相談していただければ良いと思います。
私の外来によく来られるのが頭痛の患者さんです。今回は頭痛についてお話しします。
頭痛の訴えで来院された患者さんには、神経内科医はまず意識レベルを診ます。受け答えがしっかりしているか,正しいことを話しているか,次に手足を動かせるかどうか,痛み刺激を感じるかどうか,左右の手足で筋力・感覚に違いはないのか,目の動きに異常はないのか,物が二重に見えたりしないのか,めまいはないのか等 を順番に調べていきます。
頭痛にも、急に発症する頭痛,ゆっくり徐々に症状が悪化していくもの,慢性に痛みが続き、軽快したりひどくなったり変動するタイプの頭痛等いろいろ経過の違う頭痛があります。
急に発症する頭痛は、脳出血による頭痛です。とりわけ激しい頭痛を伴うのはクモ膜下出血による頭痛です。私はなったことないのでわからないですが、頭を殴られたようなひどい痛みのようです。クモ膜下出血は脳動脈にできた主に先天性の動脈瘤が破裂することにより起こります。急激に意識を失う場合もあり脳神経外科での手術が必要です。もう一つの脳出血は脳動脈が老化し血圧上昇により破れて脳内に出血し発症します。高血圧を伴うことが非常に多いです。
出血する脳の部位,出血の大きさにより症状は様々です。すぐ意識消失する場合もあります。手足の麻痺や嘔吐・めまいを起こすこともあります。出血の部位や大きさにより出血の除去手術を行うこともありますが、人間の重要な機能の中枢に出血した場合は、手術できません。
脳出血の一番の原因は高血圧です。普段の血圧管理が一番大事なことです。血圧が高くても日々の生活には全く異常を認めることはありません。しかし血圧が高いことで脳の血管は早く老化し脳梗塞・脳出血の危険が知らないうちに増加していきます。それで脳梗塞・脳出血を起こせば不自由な生活をおくることになります。悪化すれば寝たきりの状態になるかもしれません。或いはそのまま死亡することもあるでしょう。
外来患者さんの中には「私は高血圧ですが全く何ともありません。」と、さも自慢そうに言われる方もおいでましたが、誰でも血圧が高くても身体に異常は感じません。もちろん血圧が高くても(血圧200でも)頭痛など起きません。健康な日常生活のために血圧管理は非常に大事です。
慢性的に頭痛をきたす疾患には、脳腫瘍・慢性硬膜下血腫という疾患があります。
両方とも徐々に占拠物(腫瘍や出血)が大きくなることで痛みが増してきます。両方とも頭痛は次第に悪化しますので改善の兆しの無い時は、頭部CT検査を受けるのが良いでしょう。CT画像を見ればすぐわかるので脳神経外科に相談すれば良いと思います。
慢性硬膜下血腫という疾患は、脳を覆っている外側の硬い膜と脳の間に血液が溜まっていく疾患です。ちょっとした頭部の外傷でも起こり、受傷後2〜3か月後に症状が現れます。物忘れや歩行障害・トイレの失敗(尿失禁)・寝てばかりいる・幻覚が見えるというような認知症によく似た症状が現れるのが特徴です(老人に多いです。)先に述べたクモ膜下出血も頭蓋内に出血する疾患ですが、クモ膜下出血は脳の動脈からの出血。慢性硬膜下血腫は脳の静脈からの出血です。そのため大抵はゆっくり症状が現れてきます。外科的な処置をすればすぐ改善します。
上記の重篤な疾患とは別に圧倒的に多く外来に来られるケースが、筋緊張性頭痛といわれる疾患です。頭蓋の周りの筋肉が緊張して頭痛を起こすのです。平たく言えば肩こりに類似したものです。
頭の周りを何かで締め付けるような鈍い痛みです。フワフワすると訴えられる方もいます。同じ姿勢を続けている人(例えばパソコンを長時間続けている人)・ストレスを多く抱えている人等によく見られます。治療としては運動や肩を温める・筋肉の緊張を和らげるセルシン等の内服薬や鎮痛薬を処方します。
私は問診・腹部の触診から、漢方薬(例えば葛根湯・抑肝散・五苓散・加味逍遥散・大柴胡湯・呉茱萸湯等)の処方もすることがあります。
最後に繰り返しますが、血圧には気を付けましょう。
医療法人社団さくら会森田病院
内科医師 林 俊 治