「痔」の話
- お知らせ
外科・消化器科・肛門科
医 師 中村 寿彦
痔には (1)痔核(いわゆるいぼ痔) (2)痔ろう(いわゆるあな痔) (3)裂肛(いわゆる切れ痔)などがあり、
この3つで肛門疾患の約8割にもなる。特に痔核は国民の3人に1人が罹患しているとされ虫歯に続く高い罹患率である。
痔核はその出来た場所で内痔核と外痔核に分類される。歯状線(注1)の内側に出来たものを内痔核、外側に出来たものを外痔核と呼びます。(歯状線で分けることは意味があります。)腸管は自律神経支配で皮膚は知覚神経(脊髄神経)支配です。そのため内痔核は痛みをほとんど感じず出血が主な症状となります。対して外痔核は知覚神経支配のため痛みが主な症状になります。
内痔核は次の4段階に分類されます。(Goligerの分類)
- 1度 ・・・ 排便時に出血するが脱出しないもの
- 2度 ・・・ 排便時に脱出・出血するが自然に戻るもの
- 3度 ・・・ 排便時に出血・脱出し用手的に戻さなければならないもの
- 4度 ・・・ 常時脱出したままのもの
(一般的に3度以上になると手術適応といわれますが、大きさ・症状で適応を決めます)
治療方法としては、(1)保存的加療(内服や外用薬) (2)便通改善 (3)生活改善(トイレの習慣や入浴方法) (4)手術治療 があります。
(1)については、内服であれば痔核改善薬(ヘモナーゼ、乙字湯など)、外用薬であれば強力ポステリザン軟膏・ネリプロクト軟膏・ポラザ軟膏
(2)については、便の硬さ(注2)が非常に重要です。なぜなら便はそのほとんどが水分です。便が硬い場合は水分を多めに摂取し改善しなければ緩下剤を服用します。(最初から刺激性下剤を服用することはお奨めしません。)
(3)については、トイレで気張らない。3分以内で排便する。洗浄機能付きトイレの過度の使用は控える。便意があってからトイレに行く等が重要です。
(4)については、硬化療法や結紮切除等があります。当院ではジオン硬化療法や結紮切除の手術を行っています。
最後に「痔」だと思っても、皮垂・癌・肛門周囲皮膚炎・肛門ヘルペス等の疾患の場合もあります。おかしいな?と思ったら専門医を受診することを強く勧めます。お尻は長い間使う大事なところなので、きちんと診てもらうようにして下さい。
(注1)歯状線とは、胎生期8~9週頃に原始腸管が肛門を目指して下降してきます。同時期に
原始肛門がくぼみ始めます。胎生期10週頃にドッキングして肛門が完成します。
そのドッキングしたところが歯状線になります。
(注2)便の硬さとして理想的なのは、腐ったバナナとか練り歯磨きくらい。